2013年5月25日土曜日

[Movie]攻殻機動隊ARISE border : 1 先行上映

六本木TOHOシネマで攻殻機動隊ARISEの先行上映を見てきました。



東京と大阪でそれぞれ一度ずつ、漫画を原作として不動の人気アニメシリーズとして愛されてきた攻殻機動隊の先行上映会が開かれました。

チケットは一般販売で東京会場は売り切れ、販売当日にインターネットで予約しましたがそれでも端の方の席しか取れない人気ぶりでした。
攻殻機動隊ARISEは2013年6月22日よりTOHOシネマズ系で2週間だけ放映される事が決定しています。



この攻殻機動隊ARISEは1989年の漫画作品から約24年間続いているシリーズの最新作にあたります。
何より面白いのが、作品シリーズ毎に監督やスタッフ陣が代わりその度に愛されている作品であるという事。
壮大なスケールで描かれるSFとアクションなめらかな3DCGと音楽(菅野よう子他)により増幅されてきた世界観が、
シリーズの度に脚本が代わりながらも、2層3層と厚みのあるストーリーを展開しアニメファンのみならず幅広い層に支持されて来ました。

今回の攻殻機動隊ARISE border:1はそのシリーズ4作目に当たる作品。
そのARISE(発生する)という単語からもわかる通り、今まで展開されてきた攻殻機動隊3作品の一番過去に当たる話です。
20年に渡り明らかにされなかった、主人公や仲間達の過去を徐々に明らかにするという興味深いものに仕上がっています。
この攻殻機動隊ARISE border:1〜4はそれぞれ1時間の作品から構成され、以前の30分24話形式からも大きくはずれているのが特徴です。

======================

※以下ネタバレを含みます

======================

今回の作品ARISEで攻殻機動隊ファンとして違和感を拭いきれ無かった人も多かったのではないでしょうか。

というのは主人公である草薙素子のビジュアル面での変化のみならず、
声優、音楽までガラリと変わってしまった事。

新シリーズ:草薙素子(くさなぎもとこ)

旧シリーズ:草薙素子(くさなぎもとこ)


主人公の声が代わり、脇役達の声が変わり、登場人物のビジュアルがガラリと変わっています。
僕もStand Alone Complex(シリーズ3作目)が完結した後に攻殻を見始めましたが、思い入れが強く声優陣が変わった事に特に違和感を感じた一人で、
どうしても受け入れられないという人達がいるのは先行上映会の上映後に舞台に上がった監督達に向けられた拍手の量が物語っていました。
(これは観客が正直でした。ただ戸惑いによる拍手の少なさであって作品そのものの評価では無いと思います。)

何よりも今回のARISEの上映を終え大きく変化があったと感じたのが、旧シリーズの攻殻機動隊では語られなかった主人公の過去に切り込む部分。

旧シリーズの攻殻機動隊ではあえて主人公の過去に対して過度言及する事を避け、その代わりにスキャンダラスな政府の思惑やSF世界の倫理感を厚みのあるストーリーとして提供する事で成立してきました。
このスタイルは複数の脚本家達が集まって、議論を重ねながら物語を作り上げる事で出来上がったスタイルとも言えるかも知れません。

ただ今回のARISEではこれらの旧シリーズの話を一人の脚本家が一度まとめた上で(これは脚本の冲方さんも言っていました)、旧シリーズで語られてきた攻殻機動隊に明確な過去を持たせて一本の串を通そうとしています。
そんな事頼んでないよ!という人もたくさんいるとは思いますが。

その象徴的なモノとして挙げられるのが、やはり主人公草薙素子(くさなぎもとこ)の変化です。
前髪パッツン(今回総監督でありキャラクターデザインを努めた黄瀬さんは、消しゴムでチャッと消してしまったと語っていました)というデザイン面での変化もありながら、
観客が明確に違和感として感じる程の素子の弱さ、脆さです。

旧シリーズでは荒巻課長の
"我々の間にチームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。あるとすればスタンドプレーから生じるチームワークだけだ。"
という名言が物語るように個としての素子の強さを描いて来ました。
時にはトグサという脇役キャラクター(擬態化率が低い・妻子持ち)の脆さを描く事で、主人公の個としての強力な身体能力・精神能力・判断力を絶妙なバランスで浮き彫りにし、視聴者からは素子に対する憧れを獲得して来ました。

ただ今回の攻殻ではあえてファンの憧れとは程遠い主人公をスクリーンに登場させ、
素子に憧れるファンとしては見たくない脆い部分をあえて描こうとしている様でした。
組織の中の立ち回りでも、戦闘シーンでもどこか煮え切らない弱さを感じさせる場面が目立ちました。

その他にもARISEは攻殻機動隊の過去の世界を扱ったという事で、
・擬体の解釈(軍用から個人の所有物へ)

・旧市街地(2027年と言う事でSolid State Scietyで感じるような建築物の高度さはまだ少ない)
・電脳線(攻性防壁とか電脳通信はまだ無いみたい)
についての描写も今後は注目です。

石川社長も語っていましたが、SF好きには少しもの足り無い部分もあるかと思いますが、
派生作品なのかメインストーリーなのか時代を超えて拡張される攻殻機動隊。
過去作品と対比して語られる事のプレッシャーを一番に感じているのはやはり製作陣だと思うので、これからどういう風に期待を超えてくれるのか。


ただシリーズ4作品、起承転結の起を担う作品としては素晴らしく、
2作品目は"アクション"、3作品目は"あり得ない飛躍"だそうで現在3作品目を制作中。
今後とも注目です。



0 件のコメント:

コメントを投稿